「超絶技巧」ピアノの最新トレンドをハイレゾで聴く!~クラシック音楽レーベル「NAXOS」2019年1月最新録音より

「大巨匠の往年の名演」がもてはやされることの多いクラシック。

歴史の重みを感じる過去の名演は、モノラル録音でもノイズが混じっていても感動的。けれど、やはりハイレゾの最大の魅力は、リッチなマスターに限りなく近いサウンドをご自身の環境で再生できること。現役アーティストの息づかいを高精細で感じられる「録れたて」音源を楽しまない手はありません。

 

クラシック音楽レーベルNAXOS(ナクソス)は、ソロ楽器からオーケストラまで、バラエティに富んだ最新録音を毎月リリースし続けているレーベル。今月オススメするのは、昨年6月にイギリスで録音されたばかり、世界的に注目されている30代のピアニストによるハイレゾ・アルバムです。

 

ボリス・ギルトブルグ(ピアノ)『リスト: 超絶技巧練習曲/他』

FLAC[96.0kHz/24bit] AAC[320kbps]

 

録音 2018年6月25-27日
UK モンマス、ウィアストン・エステート、コンサート・ホール

 

  • 超絶技巧を超絶技巧として弾く時代は終わった…!?

 

フランツ・リスト作曲の「超絶技巧練習曲」(1852年版)。

作曲当時には「作曲者本人でしか弾けない」曲として恐れられ、特に第4曲の「マゼッパ」や第5曲の「鬼火」は、ピアノ史に残る難曲とされています。

超絶技巧と美貌で人々を魅了したフランツ・リスト

往年の「大巨匠ピアニスト」たちも、この作品で腕を競ってきました。

難しさに指をとられてモタモタ弾いているように見えたら、カッコ悪い。いかに「達者に、派手に、バリバリ弾きこなすか」が、演奏のポイントとされてきました。

 

しかし、ボリス・ギルトブルグが弾く「超絶技巧練習曲」は、そんな「バリバリ」路線がすでに過去になりつつあることを感じさせてくれます。

たとえば第1曲「前奏曲」。

ひといきで華やかに駆け抜けるのがスタイリッシュと見なされてきたこの曲。なんとギルトブルグは、曲のなかで何度も「減速」しています。従来の価値観によるカッコ良さ重視の演奏ではありえないことです。

その演奏の意図は、2曲目以降を聴いているうちにだんだんと鮮明になっていきます。

表情のつけ方に徹底してこだわっているのです。1音1音、あるいは1フレーズ1フレーズ、テンポや音量の緩急を細やかにほどこしていきます。

鋭い音はあくまで鋭く、しかしそうでない音は、テクニックを目立たせず、やさしくリリカルに。超絶技巧を超絶技巧として弾く時代は終わった。そう宣言しているようにも聴こえます。

テクニックは物語や映像の描写として使われるものです」と、ギルトブルグは語っています。

「練習曲」には、それぞれの曲ごとに技術的なテーマがあります。たとえば、第12曲の「雪あらし」は、トレモロ(同じ音を小刻みに演奏する)というリストお得意のテクニックが全編に使われています。ただし、単に楽譜通りに弾きこなせればいいというわけではありません。雪がテーマならば雪の場面を想像させなくてはなりません。「最初はごく柔らかく、雪がメロディを覆い隠す程度。けれどそれはやがて大きな雪崩になっていく」と、彼は解説しています。

 

超絶技巧は、表現のためにある。

ギルトブルグはその信念のもと、「超絶技巧練習曲」をまったく新しいドラマチックな音楽として聴かせてくれるのです。

海外では「ヴィルトゥオジティ(名人芸)を詩情に昇華させた」「音符の山からロマンティックな物語が造形されている」といった絶賛レビューが相次いでいるこちらのアルバム。最前線の「超絶技巧練習曲」演奏と称しても過言ではないでしょう。

 

  • いまをときめくピアニスト、ボリス・ギルトブルグ

そんな新トレンドを世に放ったボリス・ギルトブルグは、1984年モスクワ生まれ、イスラエル育ちのピアニスト。

2013年に、世界3大音楽コンクールのひとつ「エリザベート王妃国際音楽コンクール」で優勝という輝かしい経歴の持ち主です。

 

「音楽に詳しくない友人のために」と自ら楽曲解説を執筆したり、アルバムのジャケットを自分でデザインしたりと、多方面の才能にあふれたギルトブルグ。温厚なキャラクターも人気を呼んでいるようです。

 

インタビュー動画(日本語字幕あり)

数年前に、オランダのとある駅に置かれたアップライト・ピアノを弾く動画も話題になりました。乗る予定の電車が遅れ、ヒマを持て余して弾き始めたそうですが……いきなりスゴい演奏がはじまって、周りの人もビックリ!

NAXOS(ナクソス)ではコンクール優勝の翌年から録音をスタート。特に「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 他」は、NAXOSのアルバムのなかでもトップクラスの人気。また、今春、新たにラフマニノフの新譜をリリース予定。ハイレゾ・ファンとして注目しがいのあるピアニストNO.1です!

ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番 他 

FLAC[96.0kHz/24bit] AAC[320kbps]

ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第3番 他

 

FLAC[96.0kHz/24bit] AAC[320kbps]

ラフマニノフ: 絵画的練習曲「音の絵」/楽興の時 

 FLAC[96.0kHz/24bit] AAC[320kbps]

ショスタコーヴィチ: ピアノ協奏曲第1番/第2番 

 FLAC[96.0kHz/24bit] AAC[320kbps]

シューマン:謝肉祭/ダヴィット同盟舞曲集/蝶々 

 FLAC[96.0kHz/24bit] AAC[320kbps]